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科学の「なぜ?」が紐解く未来。SPring-8の次なる一歩

これまで多くの研究成果をあげてきた放射光施設SPring-8が、2030年に向けて大幅なアップグレードを予定しています。この変化が、私たちの生活や産業にどんな影響をもたらすのか。SPring-8センター長・石川哲也さんに、その展望とお話を伺いました。



Q.SPring-8が2030年に向けアップグレードするとのことですが、具体的にはどのように変わるのでしょうか?


現在SPring-8に付いている加速器をすべて刷新する予定です。簡単に言うと、蛍光灯の玉をLEDに変えるようなものですね。その結果、明るさが100倍以上になり、消費電力は半分以下になります。



Q.それによって、どんな影響がありますか?


ひとつには「イノベーションサイクル」と呼ばれる、アイデアが誕生して成熟し、普及するまでのプロセスにかかる時間が短縮されることです。現在のSPring-8ですと、結果を出すまでに時間がかかりますが、輝度が上がれば使うサイクルが早くなり、空きが出ることで、より多くの人々が利用できるようになると考えています。



Q. 早く結果が出ることで、裾の尾が広がるんですね。


そうですね。例えば「道路がどのように壊れていくのか」といったような土木技術者の疑問や「地球温暖化に強い農作物を作りたい」という農産者が抱える問題にも答えられると思います。

兵庫県では、2025年産から「コ・ノ・ホ・シ」というお米が市場に出る予定ですが、これは兵庫県農林センターが高温に強いお米を作るため10年に渡る研究を重ね、おおよそ1万種の品種から高温耐性のある苗を2種類に絞りました。その成分をSPring-8で解析し、最終的に1種類を選定しました。面白いことにその選ばれた品種は、味覚で選ぶチームの出した評価結果と一致していたんですよ。



Q.最先端の科学と人々が感じる感覚が一致するのは、得心がいく瞬間ですね。SPring-8が面白いおもちゃのように思えてきました。


本当にそうですね。SPring-8って「なぜ?」を解き明かす機械なんです。「なぜ?」がわかると、イノベーションの第一歩になり得ます。SPring-8を「どう使うか」よりも「なぜこんなことが起きるの?」といった素朴な疑問を持ってきてくだされば、そことSPring-8が結び付けられるのではと思います。


例えば最近コンビニでは、海苔の高騰を受けて、海苔を使わないおにぎりが増えています。兵庫県明石市の海苔も、温暖化の影響で黒い海苔が育たず、黄色い海苔になってしまうそうです。「温暖化だから黄色くなる」ではなく「温暖化で何が起こっているのか?」にフォーカスすることで対策の仕方が分かってきますよね。


石川さんのSPring-8のテクノロジーから生まれた、噛むだけで初期虫歯を治癒する江崎グリコの「ポスカ」と傷んだ肌を保湿するクラシエの「ラメランス」について、説明してくださる石川さん。



Q.子どものような「なぜ?」が大切なのですね。石川さんは子どもの時どんな「なぜ?」をお持ちでしたか?


よく覚えてないんですが(笑)。空の雲がどう動くか、海の波がどうなるのかそんなことが面白いと思う子どもでした。それを式にしたらどうなるかなと考えていましたが、そのうちに波は波でももっと簡単な波は光だなと思うように。ただの光よりも波長の短いX線に興味が移り、X線は原子の並びが見えるぞとそんなことが連なって今に至ります。



Q.SPring-8で働く人々は、好奇心旺盛に「なぜ?」を追い求める科学者なのでしょうか。


ある意味ではそうですね。「なぜ?」のなかには、自然にあるものを「観る」科学と、新しいものを「つくる」科学がありますが、ここには「世界のどこにもない装置を作るんだ」みたいな人たちが集まっているんですよ。だから変なものがいっぱいあります(笑)。



Q.「プラモデルを作るのが大好き」の延長線上のような。


単にプラモデルを作るだけでも「もっといい接着剤はないか」とか、本当に人間を乗せられる飛行機が良い接着剤でできないかとかそんな議論が始まってしまいます。自分は乗りたくないけどね(笑)。「なぜ?」が出てくると、次の「なぜ?」が必ず出てくるんです。


石川さんのオフィスにあった現在調査中という、鉄道のレール。摩耗したレールを比べて劣化のメカニズムをSPring-8で研究し、レール損傷を自動探知する精度を高めるのだそう。



Q.石川さんも「なぜ?」を追いかけていらっしゃるんですね。


自分で「なぜを追いかけてる」と言うよりは、皆さんの「なぜ?」をここに持ってきたら、どうやって解明されるかな? をやってるのが私です。新しい「なぜ?」が来ると、ワクワクしてしまいますね。「なぜ?」が分かったら「なぜが分かって嬉しいな」ではなく、そのなぜを解決するものが出来上がるのが面白いですよね。



 

もしかしたら読者が持ってる「なぜ?」もSPring-8で解決できるかもしれませんね。今日はありがとうございました。


 

石川 哲也(いしかわ てつや)さん

理化学研究所 放射光科学研究センター センター長 


1954年静岡県生まれ。高エネルギー物理学研究所、東京大学助教授を経て、1995年理研主任研究員としてSPring-8のビームライン建設を統括。2006年より現職。




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